憶測と推測。この2つはよく似た言葉ですが、その違いをご存知ですか?
少し大まかになりますが、分かりやすくまとめると「憶測は根拠がない」、「推測は根拠がある」という違いがあります。
シンプルな違いですが、普段あまり使わない言葉だけに、この説明だけではピンとこないかもしれません。
ワイドショーなどでコメンテーターが「推測ですが」と言っていいところを「憶測ですが」と言っていたり、逆に根拠のなさそうな憶測を推測としてしまっていたり。
実際に使い分けができているかなかなか難しいものがあります。
実は推測と憶測では、使いどころに違いがあるのです。
どういうときに憶測を使い、またどういうときに推測を使うのか、シチュエーションを例に解説しました。
憶測と推測の違いは根拠があるかないか
「憶測」と「推測」は、よく似ていて混同しやすい言葉です。
ほとんどの人がこの2つをなんとなく使い分けているかと思いますが、その違いを言葉で説明するとなると、言葉に詰まってしまうのではないでしょうか。
まずは「想像して言っている」という点は共通しています。
そのうえで、憶測とは、自分で「勝手に」想像すること、対して推測は、「ある事柄をもとにして」想像することです。
「ある事柄」というのはわかりにくい表現ですが、過去にあった事実の積み重ねや、情報のことを指します。
つまり、推測が「事実や情報をもとに」想像するのに対し、憶測は「勝手に」想像するのですから、両者の違いは「根拠」のあるなしだと言えます。
理解度クイズ!
推測と憶測の違いが理解できたでしょうか。ではここで、それぞれの違いをクイズ形式で確認してみましょう。
さて、○○に入るのは憶測と推測、どちらでしょうか。
答えは「推測」です。職場にいる知らない顔という状況から、あなたは「新しく入社した人」だと想像したわけで、根拠があるのです。この調子で次の問題にいってみましょう。
○○に入るのは憶測か推測か、どちらだと思いますか?
正解は憶測です。女子社員たちは根拠もなく、その場で思いついたことを口にしているので、これらを推測とは呼べないのです。
次は最終問題、正解できたらあなたの理解度はカンペキです!
これはどうでしょう。○○に入るのは推測か憶測、どちらがふさわしいと思いますか?
正解は推測です。正解したあなた、理由はわかりますか?
「イケ田さんは次期社長確実」そう係長が思った理由に根拠があるかはわかりません。
いくらイケ田さんの仕事ぶりがいいとはいえ、それで社長確実というのは飛躍しすぎているようにも思えますよね。
しかし、人の考えを「憶測」と呼ぶことは、その考えが「勝手な想像」であると、軽く見るニュアンスがあります。
たとえば係長を嫌いな人が軽蔑するような口調で言うのなら、「憶測」だとより不信感を出すことができます。
しかし田代さんは係長が大好きなのですから、軽く見ているわけではなく、したがって推測が正解となるのです。
憶測は不特定多数に使う?
このように、いくつかの使用例をふりかえって見ると、「根拠」というのは非常にあやふやなものであると気付かされます。
常識や経験までもが根拠とされるのであれば、憶測も何かしらの個人的な経験をもとにしているかもしれませんし、なにが根拠でなにがそうでないのかわからなくなってきませんか。
憶測と推測、これらはどちらも確実なものではありません。
根拠があったとしても、どんな根拠なら推測といえるのか、基準がはっきりとあるわけではないのです。
実は、どれが憶測でどれが推測かを決めるのは、考えそのものではなく、誰がそれを考えたかによるところが大きいのです。
憶測は、言っている人間が不特定多数であることが多いという特徴があります。
たとえば問題2では、女子社員がかっこいい彼に彼女がいるかを好き勝手に憶測していますが、彼女たちの発言に根拠があるかはハッキリしません。
「あんなにかっこいい人に彼女がいないはずがない」という根拠で「彼女はいるよね」と言ったのかもしれません。
「モデル系の彼女がいそう」も、本人のこれまでの経験や統計を根拠にしているのかもしれません。
根拠ありきの想像であっても、発言者が不特定多数であったり、会話の流れの中でコロコロと変わったりする場合、それは勝手な想像として憶測と呼ばれてしまうことが多いのです。
特定の人の考えを憶測と呼ぶことは、その考えを「根拠のない勝手な想像」扱いすることなので、普通あまりありません。
謙遜していうときは
何かしらの根拠があるにもかかわらず、自信がないときや、自分の考えをへりくだって「単なる憶測ですが」ということがあります。
一方で自分の意見を言うときに「推測にすぎませんが」と、断る人もいます。
「単なる憶測ですが」と「推測にすぎませんが」という断り文句に違いはあるのでしょうか?
意味通りに受け取れば、「推測にすぎませんが」とは「根拠はあるけれど事実かどうかはわからないよ」という意味ととれます。
対して「単なる憶測ですが」は「根拠はなく、なんとなくそう思っただけだけど」という意味だととることができますが、根拠があったとしても憶測という言葉を使う人はいます。
たとえ根拠があったとしても「根拠があるのだから憶測と言うな」などと怒る人もいないので、両者の使い分けはされていないと思ってよいでしょう。
憶測や推測が予測と違うところは過去か未来か
憶測と推測と似た言葉に「予測」もありますね。
憶測と推測は、主に過去のことに使われることが多いですが、予測とは、ある事柄が未来にどうなっていくかを想像することをいいます。
たとえば「この国の未来を予測する」ということはできますが、「この国が少子化となった原因を予測する」とは言えません。
原因を想像することは、過去を振り返って考察することですから、予測ではなく憶測または推測を使うのがよいでしょう。
さて、予測という言葉には、もう一つの大きな特徴があります。
その特徴とは、予測は客観的な根拠に基づいているということです。
予測が使われる代表的なものとして、地震や台風の進路、桜の開花日や花粉の飛来情報などがあげられます。
これらはみな、過去のデータの積み重ねなど、客観的な情報をもとにしていますね。
ときどきテレビで気象予報士さんが「台風の進路の予想はどうでしょう?」と聞かれることもありますが、予想は予測もひっくるめた広い言葉なので、これも間違いではありません。
憶測や推測が推察と違うところは想像する内容
推察は、「心境を推察」「胸中を推察」のように使われ、主に人の感情を想像する意味で使われることが多い言葉です。
憶測と推測は根拠のあるなしの違いでしたが、推察では根拠のありなしは問われません。
憶測と推測では、想像する内容はさまざまなものがありましたが、人の感情を思いやるのに、根拠など必要ないですからね。
とはいえ、感情以外には使えないわけではありません。
たとえば近年では、ある食品工場で起きた異物混入事件の記事の中でこの言葉を見かけました。
記事の中で、従業員が異物混入にいたった理由について考えを話していたのですが、「従業員が混入した経緯を『推察』」と書いていました。
この記者は、憶測や推測というと軽すぎ、かといって考察というと大げさに思えて、推察を選んだのかもしれません。
ところで、推察というのは普段なかなか使う機会のない言葉ですし、ちょっと使ってみたいと思いませんか?
もしあなたが、日常の中でサラッと「推察」という言葉を出したら、みんなあなたのことを「シャレた言葉が使える人だ」と見直すこと間違いなしです。
これから出てくる①と②のどちらかの場面で「ご推察いたします」を使ってみてください。
正解するとあなたはオシャレだと思われ、間違えると場がちょっとしらけます。
さあ、周りの人にあなたのオシャレっぷりを見せつけてやりましょう。
「ご推察いたします」という言葉は①と②、どちらのほうがふさわしいと思いますか?
正解は②です。推察という言葉は、相手の心情などを想像してみることを言います。
転んで痛いというのは、想像しなくてもわかることなので、①の場面では「大丈夫ですか」と声をかけてあげましょう。
②を選んだあなた、正解です。わかってくれる人が現れて、山田さんも少し気持ちが軽くなったと喜んでいます。
飲み会が終わった後、山田さんに声をかけられて途中まで一緒に帰ることになりました。
今まであまり話したことがなかったけど、びっくりするほど馬が合い、とても仲良くなれました。
推察という言葉をうまく使えたおかげで、来週からの会社が、少し楽しくなりそうです。
まとめ
- 憶測と推測の違いはざっくり言えば根拠があるかないか
- 憶測とは、自分で「勝手に」推測することであり、対して推測は、「事実の積み重ねや、情報をもとにして」推量すること
- 根拠とは、経験や一般的常識など主観的な内容も含まれる
- 人の考えを「憶測」と呼ぶことは、その考えが「かってな想像」であると、軽く見るニュアンスがある
- 人の考えを憶測と呼ぶときには、不特定多数の人の考えを指すことが多い
- 自分の考えを謙遜していうとき、憶測と推測に大きな違いはない
- 推察は、主に人の感情を想像すること
- 予測とは、ある事柄が未来にどうなっていくかを想像すること
憶測、推測、予測、推察など、似ている言葉がたくさん出てきましたね。
それぞれの違いを覚えて、ちょっとオシャレな言葉が使える人になりませんか。
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