春になると満開の花を見せてくれる桜は、美しいとともに儚げな雰囲気がありますね。
そんな儚げな雰囲気からか、桜には怖いというイメージを持つ人が少数いるようです。
「桜の花言葉には怖い意味がある」と思っている人もいるとか。
しかし、桜の花言葉は「精神の美」と「優美な女性」であり、怖い意味はありません。
ではなぜ、桜の花言葉に怖いイメージがついてしまったのでしょうか。
もともと花言葉とは、17世紀のトルコで恋心を伝えるために作られたと言われています。
時代は移り、19世紀フランスの貴族社会でブームになりました。
そのとき出版された本によって、桜の花言葉が怖いというイメージになったとか…?
桜の花言葉が怖いと言われる理由について追ってみました。
桜の花言葉に怖い言葉はない!花言葉10個紹介
枝いっぱいに淡いピンク色の花を咲かせる桜は、長かった冬の終わりを感じてウキウキしますね。
日本人が大好きな桜ですが、「桜の花言葉が怖い」とささやかれていることを知っていましたか?
桜は子供の名前などにも使われるので、怖い意味や悪い意味があったら気になりますよね。
桜には400種類を超える数多くの品種があり、花言葉だけでも10種類以上あります。
そして、ご安心ください!桜全般の花言葉は「精神の美」と「優美な女性」であり、個々の品種においても怖い意味はありません。
個々の桜の花言葉はたくさんありますが、その一部を以下に紹介します。
名前 | 花言葉 |
ソメイヨシノ | 優れた美人、純粋 |
シダレザクラ | ごまかし、優美、円熟した美人 |
ヤエザクラ | 理知に富んだ教育、豊かな教養 |
フユザクラ | 冷静 |
カンザクラ | あなたに微笑む、気まぐれ |
ヤマザクラ | あなたに微笑む、純潔、高尚、淡白、美麗 |
カワヅザクラ | 淡泊、純潔、思いを託す |
カンヒザクラ | あでやかな美人、善行 |
シバザクラ | 臆病な心、忍耐、希望、一致、合意、燃える恋、温和、協調 |
チョウジザクラ | 純潔、高尚、美麗 |
シバザクラは意味が多いですね!たくさんありますが、全体的に美人を連想させる意味が多いと感じます。
これがなぜ「怖い」というイメージになってしまったのでしょうか。
桜の花言葉はフランス語で私を忘れないで?
調べると、フランス語での桜の花言葉が「私を忘れないで」であるとの情報が出てきます。
たしかに花言葉は19世紀フランスの貴族社会でブームとなり、その文化が日本に定着したといわれているので、うなずける説ではありますね。
19世紀フランスでは、シャルロット・ド・ラトゥールという女性がフランス語で『花言葉』という本を出版しており、これが世界初の花言葉辞典と言われています。
『花言葉』には桜の花言葉も載っており、その意味はフランス語で「優れた教育」だとされています。
私を忘れないで、ではありませんね。うーん、見当違いだったか…と思いながらペラペラめくっていると、花言葉の由来を説明しているページで、「桜」の文字を見つけました。
その昔騎士が遠征に向かう際に、礼拝堂をバージニアストック(という花)や桜で飾る風習があり、その花々は愛する貴婦人への「私を忘れないで」という思いを意味していたとか!
確かに、桜(とバージニアストック)には「私を忘れないで」の意味がありました。
愛する人を置いて遠い領地へ旅立たねばならない騎士を思えば、悲しい気持ちになってきますね。
しかし、特に「怖い」というわけでもないような?
愛し合う恋人同士の別れといえば、「木綿のハンカチーフ」を思い出します。
古い歌なのですが、若者がかわいい恋人を田舎に残して上京するさまを描いた名曲です。
二人は手紙かなにかでやり取りを続けているのか、若者が都会でシティボーイになっていく様子が娘に伝えられます。
お土産もなにもいらない、あなたのキスだけがほしいのとけなげに訴える娘がとても印象的です。
都会になじんでいく若者は最後に、きみのことは忘れた、田舎にはもう帰れないと告げます。
それを読んだ娘は、最初で最後のプレゼントとして、ハンカチーフを望むのです。そのハンカチーフで涙を拭くから、と…。
ここまで書いて、たしかにちょっと怖いかも、と思ってしまいました。
純情すぎませんか!あなたのキス以外なにもいらないとか、重いですよこれは。
しかしフランスの『花言葉』に出てくるのは騎士ですから、もっとサラッとしたものだったのではないかと想像します。
花言葉ではないのですが、もっと気になるのが桜の説明です。
『花言葉』の中で、桜は以下のように少し物騒?な紹介がされていました。
「ポントス王国ってどこ?」という疑問はさておき(今のトルコとのこと)、受難の花とは…。ちょっと「怖い」、なんていったら罰当たりでしょうか。
桜の花言葉の意味が怖いとされた理由は
桜の花言葉に怖い意味はないことはわかりましたが、花言葉とは関係なしに、桜に怖いイメージを抱いている人はいるようです。
そのイメージがあるために、花言葉も怖いと思われてしまったのかもしれません。
なぜ桜に怖いイメージがあるのか、いくつか考えてみました。
説①短命の象徴
桜は繁栄の象徴であると同時に、命の短さや儚さをも表していました。
日本神話には、花を擬人化した女神と岩を擬人化した女神が出てきます。
ある若い男神が、花の女神に一目惚れし、女神の父親に結婚を許してもらいにいきました。
父親は「一緒に姉の岩の女神ももらってくれるなら」と結婚を許すのですが、岩の女神はあまり美しくなかったため、父親の元へ送り返されてしまいます。
そこで父親は怒って「岩の女神を捨てたから、お前の子孫の命は花のように短命となるだろう」と言いました。
岩と花、一緒にもらえば花の繁栄と岩の長命、どちらも手に入ったはずなのに岩を受け取らなかったために「繁栄は得られるけれど短命」という運命になってしまったそうです。
ここで花の女神は、美しいけれどすぐに散ってしまう桜と重ねられています。
桜が短命の象徴という認識は古くからあったとみえ、江戸時代には桜を家紋に使うのは避けられたとも言われています。(全くないわけではありません)
家紋には葵や菊、梅の花など植物をあしらったものも多く、日本人に深く愛された桜もあっても良さそうなものですが、家系に望むのは第一に「長く続く」ことなのかもしれません。
家つながりですが、九州には「桜を庭に植えると、家が傾く」といういわれがあるとのことです。
実際に桜の木は成長が早く、根が盛り上がって家を持ち上げてしまうことがあるそうです。
傾くというのは経済的に傾くとかではなく、物理的に傾くのね。
説②桜の樹の下には
昭和初期、のどかな桜のイメージを、ガラリと変えてしまうような小説が出版されました。
「桜の樹の下には死体が埋まっている!」なんて言葉、聞いたことありませんか?
梶井基次郎の短編小説「櫻の樹の下には」の出だしです。
梶井基次郎はこの中で、桜の花があんなにもきれいに咲くのは、地面に死体が埋まっていてその養分を吸い取るからだよ、と主張しています。
満開に咲く夢のように美しい桜。その美しさは実は悪夢のように恐ろしい死体あってこそだと、梶井基次郎は訴えます。
桜と死体を重ねることの衝撃と、そしてその謎の説得力ゆえに当時は話題を呼びました。
坂口安吾の「桜の森の満開の下」も、美しい桜と恐ろしい鬼とを対比づけた小説です。
これらの作品が世間に強い印象を残したため、桜に怖いイメージを持つ人がいるのかもしれません。
説③武人の花
桜が怖いのは、桜が武人の花であるというイメージからきているという説もあります。
江戸時代中期、桜は歌舞伎の演出に使われるようになります。
あらすじについては割愛しますが、「忠臣蔵」の恋人同士の出会い、「積恋雪関扉」の舞台、「桜姫東文章」などなど、桜は歌舞伎の演出としておなじみのものとなっていきました。
そして、その演出から桜は武士の理想とされるようになります。
「花は桜木、人は武士」という古いことわざがあります。
現代では「花で一番すぐれているのは桜、人で一番すぐれているのは武士」のような意味だととられることが多いのですが、前後の文脈を見ると、少し違うのです。
これは歌舞伎「忠臣蔵」に出てくるもので、男ぶりを見せた町人に対して「花は桜木、人は武士とは言うけれど、あなたの男ぶりにはどんな武士もかなわない」とおだてるセリフです。
つまり、桜と武士はどちらも散り際が良い、いさぎよいという意味なのですね。
武士が人として上だとか、桜が上だとかではなく、いさぎよさに焦点があたっています。
このように、江戸時代中期から桜に対して「咲く」よりも華々しく「散る」というイメージが強くなっていきました。
こういった歴史もあり、花言葉とは別に、桜に怖いイメージを持っている人がいるのかもしれません。
番外編
最後に私が思う「桜が怖い」理由を書いて考察をしめくくらせていただきます。
桜が怖い理由、それはずばり花粉です。春といえば花粉、弥生(やよい)といえば花粉、そして桜といえば花粉。
桜の花粉で花粉症になることは少ないですが、桜を見ると花粉を思い出す人も、世の中にはいるのではないかと思います。
そういった世間のイメージのために、桜が怖くなってしまうこともあるのではないでしょうか。
確かに、花粉って苦しいものね…。
桜の花言葉は恋の言葉!?甘い青春の思い出
桜の怖いイメージについて見てきましたが、なんといっても桜は春の象徴。
新学期や新年度、新たな第一歩を告げる花と言えます。
シバザクラの花言葉に「希望」がありますが、そんな花言葉にぴったりの恋のお話を聞いてきたので紹介します。
私の友人の話です。彼女は子供の頃太っていて、自分に自信がなく、とても大人しい女の子だったということです。
そんな自分を変えたいと思い、ダイエットにはげみ、おしゃれを研究し、高校に入学する頃には見違えるようになっていました。
高校はあえて地元とは離れたところに進んだので、中学までのもっさりした友人を知る生徒はおらず、結構ちやほやされていたそうです。
しかしある日、中学時代の同級生のイトコだという生徒が、休み時間に中学時代の友人の画像を携帯で見せてしまった事件がありました。
一応言っておくと、友人の中学時代を「こんなデブだったんだよ」とあげつらうために見せていたわけではなかったそうです。
あくまでイトコの修学旅行の写真を「こんなところ行ったんだって」と見せていただけなのですが、その中に友人も入っていたようなのですね。
直接なにか言われたりすることはなかったものの、ニヤニヤと意地悪く見てくる子もいて、怖くてたまらなかったとのこと。
そんなとき、同級生の男の子がちょっと芝居がかった口調で「女の子って変われるってことだね」と言ってくれました。
その一言で教室の空気が変わり、すぐ別の話題に変わったとか。
男の子がスポーツマンタイプでちょっとかっこよかったため、友人はとてもうれしかったようですよ。ほのかに恋心を感じたそうです。
学校から帰るとき、校庭にたくさんの桜が咲いているのを見て「青春だあ」とウキウキしたのをよく覚えているとのことです。
その男の子とどうにかなったわけではなく、校庭の桜もシバザクラではなくソメイヨシノだったようですが、シバザクラの花言葉の臆病な心、忍耐、希望にピッタリではないでしょうか?
恋っていいですね。私も春を迎えるためには、ダイエットなど努力を続けなくてはなぁと思いました。
まとめ
- 桜全体の花言葉は「精神の美」と「優美な女性」であり、怖い意味はない
- 桜の品種は400種類以上、花言葉も10を数える
- フランスでの桜の花言葉は「優れた教育」であり、こちらも怖い意味はない
- 桜とバージニアストックで飾られた礼拝堂は「私を忘れないで」の意味があった
- 桜は人生の盛りの象徴であるとともに、短命の象徴でもあるとされた
- 江戸時代には、桜の散り際が武人の理想とされた
- 昭和初期には桜と死体や鬼など恐ろしいものを結びつける小説が生まれた
- 桜の花言葉には、春の花にぴったりな「希望」も含まれる
桜の花言葉に怖い意味があると思われている理由は、歴史や小説など、さまざまな要因がありますが、実際の桜の花言葉はとても素敵なものばかりでした。人名にもぴったりです。
これからも、美しい桜を眺められる平和な日本であってほしいですね。
コメント